ヴィーナスの誕生 ボッティチェリ

十枚十色(解説&エッセイ)

『ヴィーナスの誕生』
サンドロ・ボッティチェリ作
制作:1485年
所蔵:ウフィツィ美術館



ルネサンス時代を代表する絵画です。

作者は「ボッティチェリ」。



よく知られている名ではないか
と思いますが、実はニックネームです。



お兄さんが、
大酒呑みで太っていたことから

弟である彼は「小さい樽」という
意味のあだ名で呼ばれるようになりました。

※画家の名前が「通称」ということは
けっこうよくあります。

ちなみに本名は
アレッサンドロ・ディ・マリアーノ・フィリペーピ


今日の一枚は
ボッティチェリ自身の代表作であり

同時に、ルネサンスという
文化・芸術様式を
象徴する作品でもあります。



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当時、フィレンツェに君臨していた
「メディチ家」の当主からの依頼で
制作されました。



一見、森の風景のように見えるかも
しれませんが、

ヴィーナスが立っているのは海、
ほたて貝の上です。


海の泡から生まれたヴィーナスは
西風に吹かれて、島に到着しました。




ギリシア神話の女神の
誕生後のシーンがテーマなのですが


この絵は単に

神話の一場面を
描いただけではありません。




このころ、知識階級の間で流行っていた

「新プラトン主義」という思想が
絵で表現されています。




「新プラトン主義」について
ざっくり言うならば、


「古代ギリシア時代の哲学」と

その後に広まる
「キリスト教的な教え」をミックスして、


人間の生(性)や愛を
新たな目でとらえなおすという考え方。


「ルネサンス」という時代の
根幹に関わる思想です。




メディチ家のサロンに
出入りしていたボッティチェリは、

この思想を、洗練された形で
絵として表現しました。



この絵の場合でいうと、
ギリシア神話の女神を主人公にして


キリスト教的な世界観も
重ねています。




流れるような滑らかな曲線や
丹念に描き込まれた人物や背景に

注目してみてください^^



「思想」という、
目にみえない観念を表すために


幾重にも暗示や例えが
仕掛けられた

複雑な構成ですが



仮に、まったく意味を知らずに
見たとしても


丹念に描かれた画面の美しさは


時代を超え、万人の目に心地良く
うつるのではないかと思います。



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画家のもう一つの代表作
「ラ・プリマヴェーラ」1478年
の画像もあげておきますね。

image-botticelli2



この2枚はセットで
新プラトン主義を表現しています。



教科書に載るときなどは
こちらのことが多いです。
(女神が服を着てるから…だと思う)

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