舟遊びの昼食 ルノワール

十枚十色(解説&エッセイ)



『舟遊びの昼食』
ピエール=オーギュスト・ルノワール作
制作:1881
所蔵:フィリップス・コレクション



作者はルノワールです。

とても人気がある画家で
美術展などがあれば
つねに大勢の来場者を集めます。


この記事では、その愛されるヒミツに
せまってみたいと思います!



セーヌ川沿いのレストランで
ランチを楽しむ若い男女のグループが
描かれています。


都会的で、現代風の楽しみを描いた
印象派らしい一枚です。

**********

この絵に描かれているのは

古代神話や、聖書の逸話など
ある種の伝説に近いものや
精神世界のテーマではなく、

同時代の日常の風景で、
全員実在の人物です。

ひとりひとりが誰なのか、全員
特定されているのですが

とくに目立つ人をあげていくと…

画面手前で子犬と戯れているのが、

のちにルノワールの妻になる
アリーヌ・シャリゴ。

アリーヌの横で
手すりに寄りかかっているのが
レストランの経営者フルネーズ。

その向かい側で
白いノースリーブシャツを着て
逆向きの椅子に腰掛けているのが
画家のカイユボット。

カイユボットは、自身も画家であり
印象派の画家たちを経済的に
支えた人物です。

彼らのおしゃべりや
食器類が軽くぶつかるときの音、

料理やワインの匂い、

少しかたそうな椅子の座り心地や
川沿いのさわやかな空気

など……

五感に訴えてくる要素が
とても多く含まれています。

彼らが過ごす楽しい時間を
共有できるかのようです。

屋外での昼食に
数人の仲間で集うという機会は、

設定に多少の違いはあれど、

似た経験を持っている人も
少なくないと思います。

この絵が描かれたのは
100年以上前のフランスである
にも関わらず、

自分自身の記憶と重ね合わせ、

この場のにぎやかな雰囲気を
「思い出している」かのような

懐かしい気分になる人も
いるのではないでしょうか。


ルノワールは
絵画には、楽しいことしか描かない
という趣旨の言葉を繰り返し残しています。

現実は、こんなにも辛いのだから
絵画の題材にするのは

美しい女性や風景だけにしたい、と。


近代に入って、

画家が自らの意志で画題を
決める時代に移ってからは、

社会問題の提起や
個人的内面の葛藤を表現する
画家も現れるようになりました。

そのなかで、ルノワールは
前述の言葉通り

人物像をとおして、
ひたすら愛と幸福を描きました。

・女と子どもばかり描いている
・俗っぽい
・思索的な要素が薄い

のような手厳しい評価を
見かけることはよくあります。

けれども、

身近にいる大切な人たちと過ごす
幸せな場面を描き続けた画家は、

全人類が心の奥底に持つ願いが
変わらぬかぎり、

やはり変わらず
この先も人々を惹きつけ、

愛され続けていくだろうと
私は、確信しています。


**********

このレストランは、今もあります。
グーグルマップをリンクしておきますね。

リンクがうまく作動しない場合は
Maison Fournaise
で検索してください^^

>お店のHPはこちら



ルノワールが愛される理由の
(私の)結論は、「共感」です。


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