グランド・オダリスク ドミニク・アングル

十枚十色(解説&エッセイ)

『グランド・オダリスク』
ドミニク・アングル作
制作:1814
所蔵:ルーヴル美術館



今日の絵画の作者アングルは、

近代美術を語る上での
キーパーソンのひとりです。


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ナポレオンのもとで
お抱えの画家だった「ダヴィッド」が

ナポレオンの失脚とともに
国外へ亡命したあとは、

アングルが
画壇(アカデミー)のトップを務めました。



誰が見ても文句のつけようのない
「普遍的な美しさ」を追求するのが

このころに大事にされた価値観です

なになに主義でいえば
「新古典主義」になるのですが、



アングルは、
アカデミーを率いる位置にありながら

普遍的ではなく
「個人的に感じる美」を


表現したい欲求を
持ちあわせていました。



さて。

今日のこの絵の主題は、
イスラムの君主に使える女性の姿です。
(ハーレムの様子)


当時流行していた
東方趣味(オリエンタリスム)を反映して、

この頃は、似た主題の絵画が
よく描かれています。




カーテンの生地や敷物、羽飾りなどは
手触りまで想像できるほどリアルです。


つるつるスベスベの肌も
美しいですね。



ひと目見て
エキゾチックで官能的な絵画として、
インパクトがあるので

それ以上のことは
見過ごしてしまいがちですが、


よく見ると、女性の背中は異常に長く
それに伴い、腕も長いです。


腰からヒップにかけては
全体のバランスから考えると、

実際にはあり得ない大きさです。



なぜ、こんなに背中が長いのか。


この件については、
多くの研究があり、見解も様々です。


その見解の中身を紹介するには、
このメルマガでは
字数が足りないのですが、


今日のメールで
強調しておきたいことは一つです。



絵画には、現実がそのまま
描かれているわけではない




とても漠然とした表現に
聞こえるかもしれませんが

絵画を鑑賞するうえで、
とても大事なポイントです。




この概念を、認識として
持っておくことが、


色々な種類の絵画
(特に現代寄りの作品)に
接したとき、


スムーズに受容できる
下地になっていきます。



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ちなみに、
なぜ背中が長いかと言うと


アングルが背中フェチだったから……
と思っていただければ、だいたいあっています。





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