パエトンの墜落 ルーベンス

十枚十色(解説&エッセイ)

「パエトンの墜落」
ピーテル・パウル・ルーベンス作
制作:1604 – 08頃
所蔵:ワシントン ナショナル ギャラリー





ルーベンスは、「バロック」を
代表する画家で、西洋美術史上よく知られる画家です。




教養と才覚にあふれた人物で、

大規模な工房を抱える
宮廷画家として、


また、外交官としても
華々しく活躍しました。



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ひと言で「バロック」といっても

地域などによって
特徴に違いがあるのですが、


全体的なことを
ざっくり言いますと…


バロックの特徴は、
「ドラマ性」にあります。



とくに、明るさと暗さや


ピントのあった部分と
ぼかした部分のような「光」の対比で


見る人を
ぐっと惹きつける効果には、



ひとつ前の時代の

端正に整えられたルネサンス絵画とは
違った魅力があります。





なかでも、
画風の濃さが際立つのがルーベンスで

濃いのは画風だけでなく、
内容(情報量)も大盛りです。





今日の一枚は、
ギリシア神話の逸話が題材です。



タイトルに出てくる「パエトン」とは
太陽神「アポロン」の息子です。




あるとき、偉大な父から
望みをひとつだけ
叶えてもらうことになり、


アポロンの、黄金の凱旋車
(四頭で引く馬車)を
貸して欲しいと頼みます。




太陽神アポロンの
「黄金の凱旋車」とは、

すなわち、太陽の軌道を意味します。




この馬車は、アポロン以外、

 どんな神であっても
乗りこなすことができません。




アポロンは「それだけはダメ!」
と最初は断ったのですが、

最後にはやむなく
息子の願いを聞き入れてしまいます。




パエトンが馬車を走らせるとすぐに

馬たちは、御者がいつもと違うことに
気がついて暴れ出しました。





パエトンに太陽を
制御することはできず、

野山は焼き尽くされ、
海は干上がりました。

(→サハラ砂漠ができました)




この絵画には、

パエトンが馬車から振り落とされた
混乱の場面が描かれています。



動きに富んで、
複雑に入り組んだ画面構成は

まさしくバロックの王道。





たとえば、
4頭の馬の向きにだけ注目しても、

その瞬間の爆発的なエネルギーを
効果的に表現していることが

十分に感じられるのではないかと
思います。


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その後、パエトンの暴走は、

最高神ゼウスの雷によって
おさめられました。


ゼウスは、アポロンの父。
つまり、おじいちゃんのひと振りです。



次回もバロックの有名人を
ご紹介します^^


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