ブランコ フラゴナール

十枚十色(解説&エッセイ)

『ブランコ(絶好の機会)』
ジャン・オノレ・フラゴナール作
制作:1767
所蔵:ウォレス・コレクション



今日は「ロココ」を代表する画家を
ご紹介します。

ロココとは、主に18世紀フランスで
展開した美術や建築の様式です

絵画におけるロココは、

王族・貴族の生活を
美しく表現します。

私たちが漠然とイメージする、
外国のお城や

ドレスを着たプリンセスを
思い浮かべてもらうと

「ロココ」という概念に
最短で近づけるのではないかと
思います。

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華やかで可愛らしく、

ある層の人々の心を
ぎゅっと掴む作品です。

ロココといえば「フラゴナール」

フラゴナールといえば「ブランコ」

と言っても過言ではないくらい
今日の一枚は、

ロココを代表する絵画であり、
画家フラゴナールの代表作でもあります。

ロココの中でも、

特に「雅宴画(がえんが)」と
呼ばれるもので、

貴族階級の男女が、
屋外で仲良くする場面という

とても限定的なジャンルです。

華やかなドレスに身を包んだ女性が
ブランコで宙高く上がっています。

ブランコに乗る彼女を
背後で押しているのは
彼女の夫です。

もう一人、ブランコの斜め下には
愛人の若い男性(発注者)がいて

頬を紅潮させながら、彼女の
スカートの中をのぞき見ています。

主題としては、
下品と言われても仕方のない
内容なのですが、

画面全体の雰囲気は
優雅に洗練され、

「素敵な絵画」という印象を
与えることに成功しています。

女性のミュール(靴)は
勢いよく放り出されていますが、

脱げやすい靴も、尻軽の暗示。

欧州の習慣として、
通常、人前で靴を脱ぐことはなく、

脱ぐのは、ベッドに入るとき。

この場面は
そういう行為に至る流れを
連想させるのです。

さらに言えば、

ブランコをこいで、
高くまで浮き上がるときの感覚は

性的な高揚の暗示という
解釈も成り立ちます。

ロココの頃の王族、貴族層は、
宗教的教訓や寓意を説いたものよりも

華やかで、小洒落ていて、
楽観的な世界を好みました。

男女の恋の駆け引きも、

経済的豊かさや、
保証された地位のうえに成り立つ

享楽的な楽しみと言えるでしょう。

この、優雅な時代のあと、

フランスでは
革命によって王政が倒れ、

貴族社会から民衆中心の時代へと
移行していきます。

社会の大きな流れが変わると、

軽妙洒脱なロココ美術は
「軽薄なもの」という認識に変わり

時代の主役の座から
降りることになりました。

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この絵は、
アニメの原案として使われたり、

雑貨・小物類のデザインとして
見かけることがあります。

美しい絵だけれど、
意味は一応、知っておいた方が
いいかもしれません。


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